（小明視点）

「おい」

はいはい。食べ物のことでしょ？食べ物なんかあるわけないじゃない。
さっきからそればっかり！
持参したお弁当だってさっさと食べたくせに。
ああもう！なかなか目的地に着かないじゃない。
山の上って聞いたけどどれぐらいの距離なのか聞けばよかった。
思ったより遠いわね…動物とか出るのかしら。
どこ向いても木ばっかりでいい加減に飽きたわ

「小明」

返事がないのが気に入らないのか、鬼神の声が不機嫌だ。

「ないわよ」

あたしは後ろに居る式神の顔見ずに目的地に向かって進む。
なんなのよもう。暴れる仕事じゃないと知ったときの前鬼の態度ったら！
鬼神化してあげただけでもありがたく思ってよね。
ゆるりと前鬼があたしの後ろに近づく。
なにしてるのかしら？まさか私のリュックを奪うんじゃないでしょーね？
おあいにくさま。中身なんてからっぽのお弁当箱しかないんだから。
おやつのバナナだって電車で食べたでしょ？

案の定、リュックをあたしから引き剥がし、
ほらね。わかりやすい性格してるわコイツ――さぁ！中身を御覧なさい。がっかりするがいいわ！
リュックは開ける事無くそのまま放り投げて地面の湿った腐葉やらで汚れてしまった。

「なっ！投げ捨てることないじゃない！」

「隠すてめぇが悪い」

もう食べ物なんかないのに隠すわけないでしょ。腹減りすぎておかしくなったのかしら…

ち、ちょっとなになんであたしの服の中に手に入れてるの！
まさか服の中に食べ物隠してると思ってるわけ？

「ないって言ってるでしょーが！」

「あるじゃねぇかよ」

っ痛い！鷲掴みしないでよ…えっあったの？どこに？

「なかなか美味そうな果実じゃねぇか」


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（前鬼視点）


依頼の為に山頂に行くらしいが、依頼内容は小明が言ってたけど興味なくて忘れた。
暴れる仕事じゃねぇってことは確かだ。
女に文句言ったら睨まれた
ちぃますます後鬼の野郎に似てきてねぇか？
初め頃はもうちっと怯えていて可愛げあったくせによ。
オレ様の前にはでかい笈のようなモノを背負って獣道を慣れたように歩く女。
…笈から髪の毛生えてるようで面白いな

そういや妙に静かだと思ったらこいつずっとしゃべってねぇな。
小明の弁当をかっさらって食ったのを怒ってるのか？
…オレ様の知った事じゃねぇや

なんとなく女の様子を知りたくて、

「おい」

しかし、小明からの返事はなかった。
なんだこの女！オレ様が呼んでるだろうが！

「小明」

「ないわよ」

ない…？ああ食べ物のことか。
オレ様が聞くことすべて食べ物のことだと思ってやがる。
振り向きもせずに先に進むだぁいい根性してるじゃねぇか。
ああ、くそムカムカする。
いっそてめぇを食ってやろうか？

オレ様はリュックを女から引き剥がし、投げ捨てた。

「なっ！投げ捨てることないじゃない！」

文句を無視して女の上衣の留め具も引きちぎる。
そこから、美味そうなー果実がこぼれる。
あるじゃねぇかちゃんと。

「隠すてめぇが悪い」

そう言ってソレを捕える。思いのほか、柔らかくて張りのあるモノに
思わず舌舐めずりする。

「ないって言ってるでしょーが！」

まだ言ってるのか…色気のなさに呆れる。

「あるじゃねぇかよ」

女の胸を強く掴み、これだとわかりやすく言ってやろうか？

「なかなか美味そうな果実じゃねぇか」

理解したのか、女の顔がさっと青ざめる
…この女、勘違いしてるな